とある沿線の改札付近にて。
昼食、イン、道のど真ん中。
何故この様な野獣が如き有様と成り果てたのか。
そもそもの理由が
連休中にバイトをする為の派遣会社の登録会
等と言うなんともあさましい理由で
見知らぬ土地にフラリと迷い込んだ訳だが
土地勘が無いお陰で、どこが美味いだの安いだのの判別が全くつかず
また近辺を捜索しても食事処自体が少ないという状態。
空腹もそうだが何より疲労感の方が限界に近く
また、面接時間も押し迫っていたため
兎にも角にも一息落ち着きたいと思ったワタクシは
コンビニでたらこマヨネーズおにぎりと野菜ジュースを買って
歩道のど真ん中に有った
不自然極まりない存在感を醸し出しつつ
鎮座していたベンチに腰をかけてモサモサと楽しい昼食タイム。
それにしても、一体全体何故この様な憂き目にあったのか。
事の始まりは昨晩から続いた夜勤。
これがまたしみったれた事に
バタバタと落ち着きの無い8時間を過ごす事と相成り
ヘトヘトに疲れ果ててしまい
且つ又、恐ろしい事に朝を迎えて
『やっと帰れる。
家に帰ったら軽く仮眠をしてから面接に行きましょうかね。ハハン♪』
なんて余裕綽々のスケジュールを組んでいたワタクシに対し
その野望を木っ端微塵に打ち砕く残業命令。
しかも11時まで。
面接時間は14時。
もはや一刻の猶予も無い。
残業を片付けたワタクシは脱兎の勢いで職場を後にし
イヤになるほど写りの悪いインスタント写真を撮って
急いで書き上げた物だから4回も履歴書を書き直し
身支度だけはそれなりに見えるものに整えて
呼吸を整える間もなく、予定時間の15分前になんとかして
見知らぬ駅前へと到着。
コレで余裕がある筈なんてねぇんだよな。
それにしても
この様な往来のど真ん中で
たらこマヨネーズおにぎりと野菜ジュース
と言う、奇妙な組み合わせの食事を摂っている人間なんて
当然、周囲にいるわけも無く
また改札を出て数歩歩いた立地にて
この体たらくでは悪目立ちにも程があり
道行く人々が様々な視線を投げかけて来るのも頷ける話ではある。
『なんなら、こんなぁ?』
『うわ、いなげなやっちゃのォ』
といった類の視線は浴びる毎に抵抗感も薄れて行ったのではあるが
『一旦視野に入れつつもその存在を無かった事にする』
態度にはさすがに精神的なダメージが大きく
僕だって好きでこんな事をしてる訳じゃないんです!!
と声を大にして叫びたい衝動に駆られ、ふと、空を見上げると
目の前に派手なキャバクラの看板。
恐らく人気上位のキャバ嬢の写真を使ったと思われる
その看板から感じられる物は
『えーマジ貧乏人!?キモーイ
貧乏が許されるのは小学生までだよねー
キャハハハハ』
とでも言わんばかりの侮蔑の視線に思えたワタクシは
たらこマヨネーズおにぎりを硬く握り締め
父ちゃん、母ちゃん、見ててくれ!!
いつか俺も金持ちになってキャバクラをはしごしちゃる!!
と心に誓う・・・訳も無く、ただただ嘆息。
面接、ダリ−な。
なんて思いながら食べた
たらこマヨネーズおにぎりはちっとも美味くなく
この見知らぬ街は一目で嫌いになったとか。
こんな有様なので
その後の面接も非常に低調で
同じく説明会に来ていたワタクシの隣に座った
なべやかん似の男が心底気色悪かった事ぐらいしか印象に無く
仕事の取り方を今一覚えておらず今後の生活に不安。
そんな気持ちを覚えつつ帰りの電車にて
初めて乗ったラッシュ時は女性専用車両が
中学校時代の部活の先輩が発していた靴の匂いで軽い衝撃。
車窓にはうらびれた街の景色。
晴れてるんだかなんだか良く解らない空の色は夕刻のそれに近付き
側ではお世辞にも高感度の持てる容姿とは言い難いカップルが
自分たちだけの世界を展開し始め
こんな時間からワンカップ片手に澱んだ目をしている初老のオッサンは
『これが明日の貴様の姿だ』
と言いたげな視線をワタクシに送る。
世間は、灰色。
ただただ、灰色。
コメント